その昔、沖縄の首里に住む兄(アヒー)と妹(ウター)がおりました。
早くに両親を亡くした二人は助け合いながら一緒に暮らしていましたが、
妹はやがて久高島に嫁いでしまったため、兄は一人ぼっちになってしまいました。
シスコンの気があった兄はその寂しさから、首里を離れて沖縄本島南部の大里村の山中の洞窟に移り住みました。
しばらくして「兄が人食いの鬼になった」との噂が妹の耳に入ってきました。
そんな訳はないと、妹は兄が住むという洞窟を訪れました。
そこで見たものは!?
ムーチーとは沖縄の方言で「お餅」のこと。沖縄伝統のムーチーは、こねた餅粉に白糖、黒糖、紅芋などで味付けて、月桃の葉に包んで蒸して作ります。草餅のようですが、中にあんこは入っておらず餅そのものに味付けがされています。
ムーチーにまつわる昔話として「両親を亡くした兄妹が鬼を退治する」というアニメのような物語が沖縄で語り継がれています。その退治にムーチーが使われたという話ですが、人気アニメとはちょっとだけ様子が違っています。いったいどんな物語なのでしょうか。
その昔、沖縄の首里に住む兄(アヒー)と妹(ウター)がおりました。
早くに両親を亡くした二人は助け合いながら一緒に暮らしていましたが、
妹はやがて久高島に嫁いでしまったため、兄は一人ぼっちになってしまいました。
シスコンの気があった兄はその寂しさから、首里を離れて沖縄本島南部の大里村の山中の洞窟に移り住みました。
しばらくして「兄が人食いの鬼になった」との噂が妹の耳に入ってきました。
そんな訳はないと、妹は兄が住むという洞窟を訪れました。
そこで見たものは!?
ムーチーの日は旧暦の12月8日(2022年は1月10日)とされており、縁起物として健康長寿を願って食べられています。
ムーチーは日常的にもお菓子としても売っていますが、ムーチーの日が近づくとスーパーなどで多く販売されていますし、比較的簡単に作れるため家庭で自作することもあります。
さて、昔話に戻ります。
首里に住んでいた兄妹の兄が人食い鬼になってしまったという噂を聞いて山に向かった妹ですが、そこで見たものは…。
幼子を連れた妹が兄の住む洞窟にたどり着くと、兄は出かけていました。
洞窟には何もありませんでしたが、奥の方では鍋がグツグツと煮えています。
まさかと思い恐る恐る鍋の蓋を開けると、そこにはぶつ切りにされた子供の手足が煮込まれ、さながら地獄の釜の様相を呈していました。
「ヒッ!」
妹は思わず後ずさりし、洞窟を出ようとしたところ、
「おお久しぶりだなウター。元気にしていたか?」
そこには少し雰囲気の変わった兄が洞窟の入り口に立っていました。
「えっ、ええ。アヒーこそ元気?」
そう聞くと兄は嬉しそうに煮込んでいる鍋を見ながら言いました。
「もちろんさ。そういえばいい肉が手に入ったんだ。ちょうど出来上がるころだからウターも一緒に食べていかないか?」
そう言って鍋の蓋を開けました。
「美味そうだろ?背中の子もまだ小さいから栄養つくものを食べさせなきゃ。」
そう言って兄はしつこく鍋を勧めてきました。
なかなか帰してくれない兄が恐ろしくなった妹でしたが、
どうにか洞窟の外へ出ようと
「この子トイレに行きたくなったみたい。ちょっと用を足させてくるね。」
と言いました。
兄は妹の手首に縄を巻いて逃げられないようにしてから行ってこいと言いました。
妹は木陰で用を足させるふりをして縄を解くと、あたりの岩に巻きつけて一目散に洞窟を去りました。
気づいた兄は血相を変えて追いかけて来たので、
妹たちは浜辺の船に身を隠しました。
見失った兄は
「っち、せっかくのごちそうが来たと思ったのに…。」
そう言いながら洞窟へと戻っていきました。
「アヒーは私らも喰おうとしたのか。マジで人食いの鬼だ…。」
嘆く妹ですが、なんとか人食いを止めさせる手立てはないものかと、
兄の姿が見えなくなったあとに大里村の人に聞き込みをしました。
村人曰く、最初は家畜を盗んでいたが、
いつからか人間の子供をさらって喰うようになったとのことでした。
妹は村人に謝罪すると、
「あの鬼は自分の兄です。この始末は私がつけます!」
と伝え、帰って作戦を練ることにしました。
シスコンの兄は、寂しさのあまりサイコなカニバリズム野郎へと変貌してしまいました。もともとその気があったのかもしれませんが、可愛い妹には知られないようにひた隠しにしてたのかもしれませんね。
少しお話が長くなってしまったので、続きは後編でお送りします。物語の結末はびっくりな展開が待っていますので次回をお楽しみに。
後編へつづく