焼失から2年。復興が続く首里城の今。
あの日、何があったのか?
2019年10月31日午前2時34分ごろ、首里城正殿内の人感センサーが異常を検知しました。侵入者かと思った警備員が現場に確認に行ったところ、正殿内に充満している煙を確認、119番通報をしました。
火元は正殿1階の北側東寄り付近で、警備員の一人がすぐに119番通報をしましたが、通報から18分後に到着した消防車両や関係車両は多くの門や車止めに阻まれてなかなか火元に近づけませんでした。さらに「組踊上演300周年記念イベント」を2日後に控え、イベント用の舞台が設置されていたため、これも消火活動の妨げになってしまいました。
他にも、正殿周囲に設置された4基の放水銃のうち1基は使用できず、そもそも消火用の水量が足りない、火災のための夜間訓練が行われていなかった、などさまざまな要因により、異常検知から30分近くたってようやく放水を開始することができました。
火災発生からおよそ11時間後、10月31日午後1時30分にようやく完全に鎮火することができましたが、出火原因については、人感センサーは熱や煙に反応したもので、防犯カメラや火災前後に人の出入りは確認されなかったことで放火の可能性は無しと判断されました。また、電気的な異常の疑いも、決定的となる物証や映像などもないため、現在に至るまで原因特定には至っていません。
焼失した箇所、焼け残った箇所

今回の火災で被害を受けたのは首里城のシンボルとなる正殿、北殿、南殿のほか書院・鎖之間、二階御殿、黄金御殿(寄満・奥書院)の6棟が全焼、奉神門、女官居室の屋根や壁が延焼し、被害を受けた建物は合わせて8棟に及びました。建造物以外にも展示物や収蔵物の多くも焼失してしまいました。
火災に巻き込まれなかった建物は、2千円札に描かれている守礼門や城郭の外側にある門などは被災を免れることができました。
首里城は2000年12月に世界文化遺産として登録された琉球王国のグスク及び関連遺産群の一部なので、今回の火災で世界遺産登録は問題なかったのかという疑問がありますが、世界遺産登録の対象物は15世紀に建てられた首里城正殿基壇遺構(しゅりじょうせいでんきだんいこう)と呼ばれる土台部分になるため、火災での被害はほとんどありませんでした。
現在この遺構は建物に覆われており、ガラス窓越しに遺構を見学することができます。
「見せる復興」が体現する復興の姿

現在、国と県では「見せる復興」をテーマに首里城正殿の復興が2026年の完成を目指して進められています。「見せる復興」とは、首里城の復興していく過程を有料エリアとして見せ、その収益を復興の財源にあてながら進行していくというものです。
入場料は、焼失以前は一般大人1名820円だったものが現在では1名400円に値下げされました。チケットを購入して奉神門をくぐれば、かつては正殿や北殿が鎮座していた土台には広場を囲うように見学デッキが設けられています。
見学デッキには今後のスケジュールや火災の状況などが掲示されています。前述の首里城の遺構もこちらのエリアで見ることができます。
これまでは必要な資材や倉庫、加工場などの準備を進めてきましたが、2022年からは、ついに正殿の復元作業が開始され、見学デッキから正殿が日々組み上がっていく様子を見ることができるようになっています。
かつての正殿があったエリアを過ぎると、かつて国王の親族や女官たちが暮らした御内原(おうちばら)エリアに入ります。ここは2019年2月に復元されたばかりの新エリアで、今回の火災でも女官居室の壁を焦がした程度で被害は大きくありませんでした。
御内原の中でも火災後に建てられた復興展示室には、正殿の獅子瓦や小龍柱の残存物や復興に向けての取り組みを記録したVTRなど、復興に関する情報が展示されています。
これからの首里城

正殿の復元工事は国と県によって2022年から2026年の完成を目指しています。正殿完成予定の2026年以降は、現在見学デッキや資材搬入路となっている北殿や南殿の復元工事が予定されています。
また、焼失した建築物の再建計画とともに技術検討委員会が設けられ、スプリンクラーの設置、高精度の監視カメラ、水源の確保など、二度と同じようなことを起こさないようにさまざまな防火対策が検討されています。
焼失は悲しい出来事でしたが、2026年の正殿の完成を心待ちにして蘇っていく首里城の姿をときどきは見に来てくださいね。